ボラボラ対談【朗読ボランティアあめんぼ楡の会】
朗読ボランティアあめんぼ楡の会(聞き手:人形劇グループわらしべ)
設立されて30年以上、視覚障がい者及び読書困難の方に録音図書(CD・テープ)を製作する音訳活動と図書館・保健センター・高齢者施設等で本・紙芝居などの読み聞かせを行っている。音訳の利用者数は8~10人。本の発送作業は図書館で行っている。
設立したときのことを教えてください
- 昭和62年1月です。昭和60年に声の広報「やまびこ」の会員有志が録音図書テープを作ろうと動き出したことが始まりです。図書館に集まって朗読の勉強会を開き、講師としてフリーのアナウンサーの方をお招きしていました。
- 団体名の由来は、発声練習の際に活用する北原白秋の『五十音』の冒頭「あめんぼ赤いなあいうえお」が由来です。立ち上げた理由は、やまびこの活動をする中で、利用者さんの中から「広報以外(の書籍の音訳)も聞きたい。」という要望が出てくるようになりました。メンバーからも丁度「本(の音訳)もやりたいね。」という意見が出ていたので「じゃあやろう。」と。それがあめんぼの始まりですね。
活動内容について教えてください
- 現在の活動は絵本と紙しばいの読み聞かせと音訳の2本立てです。読み聞かせの活動は「楡(にれ)の会」という名称で行っております。現在保健センターでは毎月ご依頼をいただいていますし、その他図書館や老人ホームでも実施しています。
- 以前は教育委員会からの依頼で公民館でも実施しており、年間70か所ほどご依頼をいただいていましたが、現在は公民館での実施はしていません。メンバーも最盛期は40人弱ほど在籍していましたが、現在は20人で活動していますが、残念ながら男性はいません。年齢層は50~80代で81歳のメンバーさんが2人いらっしゃいますが、機械の操作はお手のものです!
- 音訳は個人作業、読み聞かせは2人一組が基本となり、定例会は月1回行っています。定期的に名古屋市のライトハウス(名古屋盲人情報文化センター)から講師をお招きし、指導していただいています。
録音の仕方や作業時間を教えてください
- 私たちが基本的に使用しているのは、デジタル仕様のDR-1という機械です。また、カセットではなくコンパクトフラッシュ(CFカード)という、約100時間収録可能な媒体に録音できるようになったことで、作業が格段に速くなりました。利用される方の再生機械もデジタル化が進んでいます。ただ慣れ親しんだ機械を使い続けたいので、カセットテープでの受取を希望される方もいらっしゃいます。
- また、一人が音訳したものを、別のメンバーが確認する作業をしています。確認する人を校正者と呼んでいます。
- 収録時間の目安としては、300ページで約6時間というところでしょうか。ただ、作業時間はその何倍にもなります。大体1時間の本を読むのに2~3時間はかかりますし、その前に下読みをしていることを考えると、さらに時間がかかっています。もちろん校正者も同じくらい時間をかけて確認作業をしています。
- 私たちは孤独な作業となりますし、一日中集中して作業することは難しいので、一日あたりの作業時間で言うと、一~二時間くらいですね。長いと一日に四時間やることもあります。
録音はどこでされていますか。また録音で気を付けていることは
- 基本的には家で行います。音訳は個人作業となるので、自分の好きな時間に少しずつ取り組んでいます。音には気を付けています。犬や鳥の鳴き声などの雑音が入ると、取り直しとなります。冷暖房の音でさえも雑音となるので、夏は(天然の)暖房、冬は(天然の)冷房の部屋で作業しています(笑)。
- 雑音が入らないようにするために、私は機械の下にバスタオルを敷いていますが、それでも入ってしまいます。本をめくる音にも気を遣いますね。私の家の前に交差点があるので、トラックの「右に曲がります。」などの音声が入ったりすることも・・・。電話なんかも鳴ると取り直しですね。なかなか、まとまった時間がとれないことと、長時間集中してできないので、少しずつ時間を見つけては作業を積み重ねています。
音訳の際に方言やアクセントに困られたことはありませんか
アクセントが気になると校正であげられますが、普段尾張弁で話しているので、注意されてもなかなかできないこともあります。アクセントは標準語に合わせるのが通常ですが、尾張の方が読むので、ある程度は許容範囲としているところもあります。また、リクエストされた本や、自分が読んでおすすめしたい本等を音訳していますが、とにかく聞き手にわかりやすく読むことが重要です。
会話の部分は感情を込めて読まれているのですか
- 朗読と音訳は違うもので、私たちの活動は音訳です。地の文と会話文は違うとわかるように読みますが、感情はこめません。本と利用者の間に人(ボランティア)が入ってはいけないと考えています。音訳では、利用者自身に本の内容をイメージしてもらうことが重要となってくるので、読み方に感情を込めると、聞いている人に読み手のイメージを押し付けることになってしまいます。
- 音訳は『白いご飯』が良いと言われます。味付けは自分でできるように、聞き手に想像の余地を残すことが大事と言われます。もちろん、読み聞かせのときは、感情を込めて読んでいますよ。
利用者さんは何名いらっしゃいますか。また利用者さんと直接会う機会はありますか
- 大体7~8人くらいですね。要望の録音図書をお送りして、その返却があればまた要望に応じて新しい本をお送りすることをルールとしています。発送作業は図書館で行っており、利用者が無料で返送できるようになっています。作成した本は図書館に置いてあるので、利用者さんが図書館で直接借りることもできます。図書館には現在360冊ほどが蔵書としてあります。
- 基本的には依頼に対して応えるようにしていますが、マンガの依頼は断ったことがあります。どうしても伝わりにくいので・・・。4コママンガなら音訳したことがあるんですけど・・・。
- 要望をいただくと、嬉しいですね。自分の音訳を楽しみに待ってくださる方がいると思うと頑張ろうという気になります。
活動する中で、自身や家族などの周りの人に変化はありましたか
- ボランティアを始めたことで、外出の機会が増えました。家族からは理解してもらっています。
- ちょこっと丸くなれたかなと思います。利用者さんと接する時に、相手は大きな気持ちで接してくださるので、そういう風になりたいなと思ったので。前は結構尖っていたんですよ~。
- 最初は紙芝居の読み聞かせから始めましたが、上手にやれない時は注意してくれる先輩がいました。大人になってからそういう機会ってなかなかないので、本当に助かりました。今でも紙芝居に臨む時は緊張感がありますね。
- 視覚障がい者の方と接する時に、例えば何かをその方の近くに置いたことがあったんですけど、「黙って置いてはわからないよ。どこに置いたか教えてほしい。」と言われたことがありました。
- 何時何分のところに何をおいたと言って欲しいと言われたこともあったなぁ。細かいことを色々教わって、みなさんに育てていただいたと思っています。また、私が冗談ばかり言っているからかもしれないですが、利用者さんも私に冗談を言ってくれるようになったりして…!心を開いてくださったのかなぁと思うと嬉しいです。
ご家庭の事情で活動を中断する方もいると思うのですが、復帰する方も多い印象です。何か理由はあるのですか
私は2年間本を読まなかった時期がありました。新聞で連載していた「親鸞」を切り抜き、すごく時間をかけて音訳しましたが、上下巻となり利用者さんから「長くて聞くのが大変だ。」と言われ、完結編を読む気が起こらなくなってしまい、それまで切り抜いていた新聞記事も捨ててしまいました。でもまた読んで欲しいという要望をいただき、背中を押してもらえて再開することが出来ました。でも復帰した直後は口が回りませんでした。さぼったらいけませんね。
音訳の仕方で、指導の先生からの指摘等も多くあると思います。それでも、長年続けてこれた理由は何でしょうか
- 最初は先生の仰っていることが殆ど理解できなかったし、指摘されると正直気が重くなります。でも、ひきずらないことが大事ですね。あめんぼの何が自慢できるかって、雰囲気がすごくいいんですよね!目的が同じなのでみんな一つになれていると感じます。其々が自分のやっていることに誇りを持っているし、あめんぼの活動が好きなんでしょうね。
- 好きという思いは前提としてみんなに共通するものだと思いますね。最初はやまびこ主催の広報を読むための講習会に申し込み、受講の際に「ボランティアやってもらえますね?と言われて活動を始めました(笑)。活動をする中で読むのは難しいと思って辞めようと思ったこともありましたが、活動自体も使用している機械も物珍しいし、何よりも好きだから続けてこられました。
- 近所や地域のつながりではなく、目的を同じとする仲間が出来たことが大きいですね。
(社協)月に1度定例会があるとのことですが、その存在も大きいのでしょうか。
- そうですね、みんなも頑張っていることがわかるので。
- 音訳も校正も大変だし時間がかかるけど、なるべく何度も校正して完成度高くしていきたいなという気持ちはあります。今の所一回が精一杯なんですけど・・・。ある、程度図々しさも必要だよね(笑)。
活動の中で楽しいと思うこと、逆に困ったことや難しいことはありますか
- 利用者さんとの交流は楽しいですね。また、紙芝居をみていた子どもたちがすごく喜んでくれるんですよ~。紙芝居の枠まで近づいてくれるので、後ろに座っていた子が「見えない~。」と言っていました(笑)。
- 大変なことも多いですけど、できあがった時の満足感が感じられたり、あなたに読んでほしいとリクエストがあった時はうれしいですね。利用者さんと会った時も自己紹介しなくても声で私のことを分かってくださったりするんですよ~。失楽園を読んでほしいと言われた時は少し困りましたけど(笑)。
- 元々私たちは江南市身体障害者福祉会の視覚部の方対象に活動をしていますが、利用者さん自体も減っています。昔は自身で情報を入手するのが難しく、困っていた方でも、今はPCやネットなども発達したことで、様々な媒体を通じて本が読めたり情報を入手できるようになったことが理由の一つです。また、音訳は著作権の問題が常についてまわるため、対象者が限られてしまうこともあげられます。
- 私はあめんぼの活動を19年やっていて、34~5冊の本を音訳してきましたが、一冊としてまともに読めた本がないんです。音訳は奥が深いというか、難しいなと思いますね。できたことに満足してないんですよ。やっぱり聞いてくれる人がいるから読まなきゃいけないと思うし、もっとうまくなりたいと思いますね。今思ったんですけど、今まであめんぼではお互いの本読みについて感想や指摘を言わなかったので、今後は意見交換するといいかもしれません。
みなさんにとってボランティアとはなんですか
- あめんぼがボランティア団体だと思って入ってきたメンバーもいると思いますが、大半は好きなことをやっていたら、ボランティアにしていただいたという印象だと思います。あとは、誘われて入った方も多いかな。
- 自分がボランティアをしていると思っていないんですよ。ボランティアとは何かなんて考えたこともなかったです。ただ自分が好きなことをやっていて、それを聞いてくれる人がいるというだけで。誰かを助けてあげるというおこがましいことではないですね。活動には満足感はありますが。ボランティアって、困ったことに寄り添うことなんでしょうか。
- 昔ボランティアとは、お金持ちの暇つぶしと言われたこともありましたが、「お金はありません。」と伝えました(笑)
- 私は入ってくださいと言われて始めていますが・・・。ボランティアってなんなんだろう。楽しくて好きだからやっているだけなんですよね。ボランティアイベントに参加している時は、ボランティアという気持ちで臨んでいるけど、普段やってるあめんぼの活動はボランティアだと思ってないですね。
みなさんにとってあめんぼとはなんですか
- 生活の一部になっていると思います。
- 私は生き甲斐かな。地味な活動だけど、コツコツと積み重ねていると、『継続は力なり』という言葉を実感します。
最後にひとことお願いします
(聞き手)あめんぼさんとは隔月のボランティアセンター運営委員会等で関わっていましたが、団体の内部のことや詳しいことは知らなかったです。でもこのインタビューで、あめんぼさんも私たち(わらしべ)も、好きなことに出会えた私たちはすごく幸せなんだと思えました。
(聞き手)あめんぼさんのお話しを聞いていると、苦労が多いように思えるのに、なんでもないことのように話されますよね。好きなことで他の人に喜んでもらえることって嬉しいですよね。
- どのグループでも努力ですよね。でも努力と思わずに活動できることが幸せだと思います。
(社協) vol.1のわらしべさんと今回のあめんぼさんのインタビューを経て、共通点に団体の雰囲気が良いということがあげられると思いました。楽しいし好きだから続けていられるのは素敵な事ですね。
(聞き手)話を聞いていて、あめんぼさんは長距離ランナー、わらしべは短距離ランナーのようだと思いました。私たちもあめんぼさんのように研鑽していけたら良いなと思います。
(社協)今年で職員2年目で、昨年の江南ふくしふれあいまつりでは、まず団体さんの名前やお顔を覚えようと思って取り組みました。今年はボラ×ボラでそれぞれの団体さんの色んな思いがお聞きできているので、今回の機会を踏まえて3月のふくしまつりに臨むことが楽しみです。
(聞き手)私は先月から参加したばかりなので、わらしべのこともボランティアのこともわかっていません。また、私もわらしべがボランティアということを知りませんでした。江南生まれ江南育ちですが、このような情報は初めて聞くので、私も周りもボランティアに対する認知が低いと感じました。今回お話をお聞きし、色んなことを知れてとても楽しかったです。
- ボランティアセンター運営委員会では、顔を合わせていたものの、ゆっくりと話をする機会がなかったので、今回この機会でわらしべさんとつながれてよかったです。あめんぼの活動は今後も続けていきたいです。
次回も乞うご期待。